前回、令和元年10月から行われる介護報酬改定について説明しました。

介護サービスの基本単価がそれぞれ上がり、要介護度ごとに設定される区分支給限度額が増えるというものです。

今回の報酬改定はそれだけではなく、新たに介護職員特定処遇改善加算という加算が追加されることになりました

今回はその介護職員特定処遇改善加算についてご紹介します。

そもそも介護職員処遇改善加算って何?

処遇改善加算と「特定」処遇改善加算

今回新たに創設される介護職員「特定」処遇改善加算の前に、介護職員処遇改善加算って何?というところからまずはおさらいしていきましょう。

介護職員処遇改善加算というのは、高齢化により、介護サービスを必要とする利用者が急激に増加していくのに対して、介護サービスを提供する側である介護職員が大幅に不足していることや、介護職員の賃金がそれ以外の業界と比較して著しく低いということからスタートしたものです。

ちなみに、最初の導入は介護職員処遇改善交付金という名目で、条件を満たした事業所を対象に支給されるものでした。このときは交付金だったので、利用者負担はありませんでした。

これが、介護職員処遇改善加算となり、利用者にも自己負担の発生する加算に変更されました

介護職員処遇改善加算の概要

介護職員処遇改善加算では、計画的に介護職員の昇給や待遇改善が実施できているか、職員の研修や技術指導などを行い能力評価ができているか、などの項目を満たすことで、段階的に取得できる加算が異なっています。

多くの要件を満たす事業所は介護職員処遇改善加算Ⅰを算定できるので、最も多くの加算による報酬を受け取ることができます。それは同時に、利用者への負担も大きくなることを意味します。

サービスの種類ごとに加算の割合が異なり、最も加算の割合が大きい訪問介護の場合はそれ以外の加算を含めたその月のサービスの合成単位数の13.7%を加算した金額が介護職員処遇改善加算として算定されます。

これが、従来の介護職員処遇改善加算でした。

令和元年10月スタート、介護職員特定処遇改善加算とは?

従来の処遇改善に上乗せされる処遇改善加算

今回新たにスタートする介護職員特定処遇改善加算はさらにその上乗せの処遇改善を行うためのものです。

処遇改善加算により、介護職員の離職率の改善などは成果としてみられるようになりました。ただ、それでも介護職員の賃金はまだ労働者の平均よりも下回っていることや、高齢化の進行もあり介護人材の不足が深刻化している状況は続いていました。

厚生労働省資料

さらに、これまでの処遇改善加算では処遇改善の取り組みとして基本給の定期昇給などを義務付けるものではなく、介護職のキャリア形成の部分には手が届いていませんでした

そこで、介護の仕事でのキャリアアップができる仕組みとして、介護職員特定処遇改善加算が創設されることになりました。

処遇改善の対象者は?

今回の特定処遇改善加算のメインターゲットはベテランの介護職員です。

具体的には勤続10年の介護福祉士という対象者像を想定しての加算となっています。

広く介護職員全体にいきわたらせるための加算ではなく、能力や経験に優れた職員にピンポイントで待遇改善を図るための加算です。

介護職員の給与が8万円上乗せされる?

当初、対象となる介護職員には毎月8万円分の給与上乗せ、と報道されていました。

8万円上がる職員が出る事業所もありますが、加算の算定条件となっているのが、特定の職員の8万円の賃上げ、もしくは年収440万円(手当等を含む)までの賃金増が行われていることが条件になります。

なので、全員が8万円上がるわけではありません。

賃上げの対象となる職員をどのように決めるかは事業所の裁量にゆだねられていますので、不公平感から多くの事業所内に不満の声が出ることは間違いないでしょう

また、介護職員だけでなく、その他の職員もこの処遇改善による給与改善の恩恵にあずかることもできます。

もちろん、ベテラン介護福祉士に最も手厚く加算分の報酬がいきわたるように設定することが条件となっています。報酬の振り分け方を上の図のように、経験・技能のある介護職員:その他の介護職員:その他の職種で4:2:1という割合で設定するケースが多くなりそうです。

サービスを利用する側の自己負担は?

新しい処遇改善で自己負担はどのくらい増えるのか?

サービスを利用する側としてはどのような点に注意することが必要か、説明します。

特定処遇改善加算にはⅠとⅡの二種類があります。また、サービスごとに加算される割合も違いますので、特定処遇改善加算を算定するのか、算定するとしてⅠとⅡのどちらを算定するのかというのは確認しておいた方がいいでしょう。

各事業所で料金表も改定するかと思います。サービス利用に伴う費用が増えますので、サービス利用一回あたりではなく、一カ月でどのくらい増えるのか、費用のシミュレーションをしておくことをお勧めします。

ちなみに、一番加算率が大きいのは、従来の処遇改善加算同様、訪問介護や定期巡回随時対応型訪問介護看護等です。

それでも、最大で6.3%なので、従来の処遇改善加算と比較すれば半分以下の加算率となっています。

もちろん、事業所が算定する加算ですので、事業所に要求して加算を取り下げることはできませんし、ケアマネに要求して加算を算定から外すこともできません。
※今回の処遇改善も従来の処遇改善加算もケアマネの給付管理の範囲外で事業所が請求する加算になっています。

料金が上がることにどうしても納得がいかないのであれば、処遇改善加算を取得していない事業所や特定処遇改善加算を算定しない事業所にサービス事業所を変更するという方法もあります

ただ、長く介護職員が働き続けることのメリットは介護サービスを受ける側にも大きいと思います。介護職員が長く働き続けるためには、定期昇給なども含めた適切な待遇が必要ではないでしょうか。

本当に介護職員の処遇改善は進んでいるか

今回の特定処遇改善加算には「見える化要件」という要件があります。

サービス事業所のホームページや、介護サービス情報公表制度のホームページなどに、処遇改善の算定内容とその取り組みについて記載することが要件の一つとして設定されました。

利用者側として支払うことになった加算金が、どのように運用されているかを確認することもできるようになります。

介護報酬の改定で自己負担する費用が増えるというのは非常に頭の痛いことではありますが、せめてそれが介護サービスの質の向上に役立てられることを願いたいですね。