急速に増える訪問マッサージ事業者

介護が必要になった方で、介護保険以外に利用するサービスとして増えているのが訪問マッサージです。

腰痛や肩の痛み・肩こりなどを抱える高齢者は多く、高齢化とともにニーズも拡大し、訪問マッサージの利用者も増えています

フランチャイズ展開をする事業者も多く、事業所数も増えています。

ただ、コンプライアンスにかけている事業所なども多く、不正広告や強引な勧誘などを行う悪質な事業所が増えているという指摘もあり、規制が必要という声も聞かれます。

事業所数は増加していますが、急激な事業所数の増加で、地域内で利用者の獲得競争が起こり、倒産する事業者も少なくありません。

介護サービスを利用している方の場合、訪問マッサージを医療保険適用で利用できるケースも多いです。

今回はそんな訪問マッサージの利用にかかる費用についてご紹介します。

医療保険が適用になる条件

訪問マッサージを医療保険を使って受けるためには大きくふたつの条件があります。その条件について解説していきます。

歩行困難で通院ができない方

あくまで基本は通所での施術

まず条件としてクリアする必要があるのは、「歩行困難等、真に安静を必要とするやむを得ない理由等により通所して治療を受けることが困難な場合 」という部分です。

通所する、つまりは接骨院・鍼灸院などに通院して施術を受けることがあくまでも基本です。ただし、それができない場合に訪問マッサージの保険適用を認めるというスタンスです。

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訪問マッサージの保険適用を認めるための要件となっているのが、「歩行困難等」というものです。

「歩行困難」の基準はあるの?

じゃあ、寝たきりじゃないと訪問マッサージを保険で受けることはできないのか?と思う方もいるかもしれません。

実は、歩行困難の基準が具体的にあるのかというと、別に何メートル歩けるかとか、歩行器だったら歩けるかとか、実際はそういった基準はありません。

また、通院が困難ということについても、近隣で施術を受けられる場所があるかどうかとか、タクシーへの乗り込みはできるかどうかとか、そういった条件までチェックすることはありません。 医療機関への通院はタクシーで行っていたとしても、訪問マッサージの利用が認められるケースもあります。

非常に要件としてはあいまいながら、歩行が困難で通院ができないという要件は示されています。しかし、その状態は寝たきりである必要はありません。

能力や施術する場所へのアクセスの環境などの具体的な基準自体はないため、「歩行困難で通院できない」という要件に関してはかなり広い範囲で解釈されているというのが現状だと思っていいでしょう。

歩行器で歩く男性イラスト

医師による同意書

療養費の支給のためには医師の同意が必要

もうひとつ。重要なのが医師による同意書が必要になっているということです。

これはなぜかというと、医療保険適用になるということは、それが医療的に必要なものであると判断されるものでなければいけません

医師の同意書という形で医療的な必要性を確認しているということです。

訪問マッサージの保険適用を認めるということは、医師側で、その疾患に対する効果的な治療を行うことができず、ほかに代替手段がないため、マッサージを医療保険で行うことを認めるというものです。

医師が診察を行い、最長六か月の期間での同意書を発行します。それを受け取った訪問マッサージ事業者が施術者を派遣することになります。

同意書を書く医師が主治医である必要はない

ただ、ここでネックになるのが、主治医がマッサージや鍼灸に対して懐疑的な場合です。

主治医は担当する患者の診察や治療、健康管理をしているわけです。整形外科であればリハビリも病院内で行っている場合が多いと思いますが、それなのに、マッサージでないと改善が見込めないという同意書を書かなければいけないというのは、大いに医師のプライドを傷つけるものではないでしょうか。

もちろん、患者のためならと喜んで同意書を書く医師もいると思いますが、どの医師もそういった対応をするとは限りません

医師と相談する男性

訪問マッサージの同意書を主治医に断られた場合、どうするのでしょうか。

実はこの同意書、主治医によるものと限定されたわけではありません。その人を診察している医師であれば、どの医師が書いても認められるのです。

そのため、主治医・かかりつけ医に同意書を断られたことを相談すると、マッサージ業者が同意書を書いてくれる医療機関を紹介するようなケースもあります。その場合、訪問マッサージをしていることを主治医に伝えることで関係が悪化してしまう場合もありますので、注意しましょう。

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施術費と往療費

医療保険の負担割合に注意

続いて費用についてです。

医療保険適用の場合、その健康保険の自己負担割合によって支払う費用も変わってきます

例えば、後期高齢者医療保険であれば、所得基準によって負担割合が異なります。基本的には1割負担ですが、現役並み所得の方は3割負担に該当します。

また、生活保護の方は医療扶助が適用されるので、費用の自己負担なしで利用することができます。重度障害者医療証をお持ちの方も自己負担は発生しません。

訪問マッサージの場合、利用料金は大きく施術費と往療費のふたつに分かれます。施術費と往療費の合計に1割~3割の自己負担割合をかけた金額が自己負担する費用になります。

それぞれの内容を見ていきましょう。

施術費

これは実際の施術にかかる費用です。いわゆる技術料です。

その施術部位の数などによって料金が異なります。一部位340円で、5部位まで施術をすることができます。5部位まで行うと1,700円となります。

これに加えて、鍼や灸などをすると、その施術料金が追加されることになります。

マッサージ施術を受ける女性イラスト

往療費

往療費は往診で言えば往診料です。施術者の移動距離に応じた費用が発生します

現在、4kmを基準にして、4km以下の場合は2,300円、それを超える場合は2,700円となっています

16kmまでは往療が認められますが、それ以上の距離を訪問することは特別な事情がない限りは認められていません。

車を運転する男性イラスト

(施術費+往療費)×自己負担割合

施術費と往療費の合計に自己負担割合をかけた金額が自己負担する費用になります。

たとえば、訪問マッサージの事業所から4km圏内の1割負担の方を対象に、5部位のマッサージを行ったと仮定します。

5部位のマッサージを行ったので、施術費は1,700円。4km以下の距離なので往療費は2300円。合計すると4,000円になります。

これに自己負担割合の1割を掛け合わせると1回あたりの料金400円が算出されます。この費用を訪問マッサージ事業者に支払います。

実際は月末締めで翌月支払いというところが多いと思いますので、一か月分の利用料金を翌月に支払うという形になります。先ほどの紹介したケースであれば、週3回のペースで13回施術を受けたとして、一か月5,200円という費用になります。

マッサージ施術者のイラスト

費用負担が少なく、介護保険との併用もできる訪問マッサージ

このように、訪問マッサージは保険適用を受けることで費用負担が少なく利用できるサービスです。

介護保険のサービスを利用していても訪問マッサージは併用できます。例えば、介護保険の区分支給限度額いっぱいまで利用していても、訪問マッサージは医療保険のサービスになるため、介護保険の枠に縛られずに利用することができます。

訪問リハビリテーションと混同しやすいかもしれませんが、理学療法士や作業療法士等が訪問して身体機能の自立を目指して機能訓練を行う訪問リハビリテーションと、徒手的なマッサージを通して症状の改善を目指す訪問マッサージとでは目的も異なっています。ただ、リハビリに近いことを訪問マッサージで行うこともあるし、徒手的なマッサージに近いことをリハビリが行うこともあるので、その違いが余計に分かりにくくなってきているようにも感じます。

最近はポスティングで広告を入れるような業者もありますが、健康保険でのサービスをポスティング抗告することは禁止されています。

利用を希望する場合はまずは担当のケアマネジャーに相談することをお勧めします。ケアマネジャーの事業所には訪問マッサージの業者の営業が頻繁に訪問していますので、業者のパンフレットなどをケアマネジャーさんも事業所に保管しています。

また、マッサージは人によって身体に合わない場合や、かえって症状を悪化させてしまう場合がありますので、利用については慎重に検討いただくことをお勧めします。