住み慣れた自宅で最期を迎えたい。
こんな思いを持つ方も増えています。
以前は人生の最後を迎える場所の多くは病院でした。

けれど、ここ数年、在宅看取りでお亡くなりになるケースも増えています。
そんな在宅での看取りに必要なお金について、
なかなかわからないことの多いと思われるこのテーマでご紹介していきたいと思います。

最期を迎える場所は病院だけではない

平成28年の厚生労働白書に掲載されている情報ですが、
最期を迎える場所の希望として、55歳以上の男女に対して行った意識調査では
その半数以上が自宅での看取りを希望しているというデータがあります。

厚生労働白書(平成28年)より

でありながらも、実際に最期を迎える場所ではどうかというと、まだまだ圧倒的に病院で亡くなる方が多いというのが現状です。


以下のデータは死亡場所別の推移になります。
統計開始の1951年の時点では自宅で死亡する割合の方が圧倒的に多かったのです。
それが、1975年には逆転し、現在も医療機関で亡くなる人の割合が圧倒的に多いというのが現状です
自宅で死にたくても死なせてもらえない社会になったということです。

厚生労働白書(平成28年)より

自宅で死ねば、不審死として警察が入ります。
最後の別れを迎えたその日に警察からの事情聴取を受けるなど、つらい時間を過ごすことにもなります。

最後の瞬間を自宅で迎えたものの、その自宅の前には警察車両があり、近所からもいろいろ噂される・・・なんてことが起こりうるのです。

自宅で最期を迎えるためには「準備」が必要

ただ、訪問診療を受けていれば、スムーズに死亡診断書の作成なども行うことができ、家族や親しい人と別れの時間を過ごすことができます
自宅で穏やかに死を迎えるためにも「準備」が必要になります

統計を見ての通り、病院で亡くなる人の割合は2005年以降、減少傾向です。
ただ、自宅で最期を迎える人の割合が劇的に増えているということではなく、
自宅以外の場所として介護施設などが看取りの場所となるなど、その選択肢が広がってきているという結果になります。
まだまだ在宅での看取りは圧倒的に少数派です

在宅での看取りを積極的に進める在宅医も増えており、
特に末期がんの患者が訪問診療や訪問看護などのサービスを受けながら自宅での最期を選ぶというケースは多くなってきています。

さいごまで自宅で診てくれるいいお医者さん

最後を自宅で迎えたい。どのくらいの費用が必要?

では、実際に最期を自宅で迎えるためには、どのくらいの費用が必要なのか、紹介していきたいと思います。

必要な必要としては医療保険に該当する医療費と介護保険適応の介護サービス利用にともなう介護費用、それ以外の自己負担と大きく3つに分けて考えることがわかりやすいかと思います。

末期がんの方の一般的なケースで見ていきたいと思います。

医療費=訪問診療費(お医者さん)・薬代・訪問看護費

介護費用=訪問介護(ヘルパーさん)・ベッドや床ずれ予防マットレスなど介護用品のレンタル・訪問入浴(訪問のお風呂屋)・居宅療養管理指導料(訪問診療や訪問薬局からケアマネジャーへの情報提供にかかる費用)

その他の費用=医者や訪問看護師の交通費・おむつ代・食費・亡くなった後のエンゼルケア費用など

がん末期の方への訪問看護は介護保険ではなく、医療保険に

医療費の中にある、訪問看護費について簡単に説明します。

通常65歳以上の方の訪問看護のサービスは介護保険での対応が優先となっておりますので、介護保険サービスとして提供されます。

ただし、がん末期の診断の場合は訪問看護サービスは介護保険から切り離され、医療保険での提供となります

介護保険の場合は被保険者(利用者)の要介護度によって、保険内で利用できるサービスの上限(負担限度額)が設定され、上限を超えたサービスの利用については全額自己負担となります。つまり、1割で利用していたサービスが、10割(全額)自己負担になる、ということです。

がん末期などの方は頻回な訪問が必要になることから介護保険の上限を超える可能性が高くなります。計画では限度内に収まっていても、緊急時の訪問対応なども当然多くなります。上限を超えるので訪問できない!なんてことがないように、がん末期の方の場合は介護保険の枠を外れて、医療保険での提供になります。

医療保険の方が加算や算定される項目が多く、自己負担が高くなる場合もありますが、利用可能な範囲の上限がないことが最大のメリットです。

高額療養費による払い戻しが受けられる

また、訪問看護の費用についても医療費に組み込まれますので、高額医療の該当になり、高額療養費の基準を超えた自己負担は発生しません。結果として、全体的な自己負担の費用は抑えられる場合が多くなります。

この場合、医療費に該当するのは 訪問診療と薬局で支払う薬代と医療保険で提供される訪問看護の費用になります。

高額療養費についての説明
平成30年8月にも変更第二弾

収入によって上限額は異なりますが、一般所得の場合、一か月の上限は1万8000円となりますので、それ以上の医療費の自己負担は必要ありません。

一般所得の方の場合に関しては、末期がんで月二回以上の訪問診療や薬での疼痛コントロールが必要な状況であれば、この高額療養費に該当するくらいの自己負担は発生することが多くなります。

高額療養費に該当した自己負担分については役所から払い戻しで費用が帰ってきます

医療費の自己負担は限度額を超える費用は払い戻されるので、(一度は支払いますが)一般所得の方であれば18,000円以上にはなりません。

ただ、現役波所得の方については自己負担はかなり高額になりますのでご注意ください。

それに加えて介護保険のサービス費用や全額自己負担となるその他の費用が必要になるのですが、それについてはまた次回にご紹介できればと思います。