<増える介護費 自己負担>(上) 高齢者の不満

 金融資産がある人の介護費自己負担を増やす介護保険制度の見直しが、八月から始まった。これまでは所得によって負担額が決められていたが、資産に初めて手を付けたのが特徴。しかし、老後のために少ない所得からコツコツためてきた高齢者からは不満の声が漏れるほか、自治体職員からは「意図的に資産を隠されたら、把握は難しいのが現実」との指摘も出ている。

 「年金が少ないのは若いころから分かっていたから、大病したときや葬式代を考えてためてきた。貯金があっても、裕福な暮らしをしているわけではない」。中部地方に住む男性(84)はうめいた。

 寝たきりの妻(82)は、自分では排せつや食事がほとんどできない要介護「5」。男性が自宅で介護しながら、週三日のデイサービスと、月に四泊のショートステイを使っている。

 元自営業で、築五十年近い木造一戸建てに住む。年金は夫婦合わせて月に約十万円だが、預貯金は夫婦で二千万円超。生活費は年金だけでは足りず、貯金から毎月十万円ほど取り崩す。所得が低いため住民税の非課税世帯で、これまで介護費の軽減対象だった。

 そこに降ってわいた自己負担の見直し。今月から軽減の対象外になりそうで、月に一万五千円ほどのショートステイの利用料は、三万円近くになる。「頑張ってお金をためてきたのは何のためだったんだろう。腹が立つ」と憤る。

 制度見直し後も、夫婦の金融資産が二千万円以内なら軽減を受けられる。男性が思いついたのが、自宅の改修工事。以前から耐震強度に不安があり、改修しなくてはと思っていたからだ。「お金を持っていると損をする感じ。それなら貯金を使ってしまって、減らそうと思った」。八月上旬に既に耐震診断を受けた。

 今回の自己負担見直しでは、預金通帳や株式口座残高のコピーなどを添えて申請しなければ、軽減を受けられない。ただ認知症であったり、一人暮らしのお年寄りの場合などは、制度を理解し自分で手続きできるかは疑問がある。岐阜県のケアマネジャーの女性によると、介護サービスを受けている高齢者の家族で、遠距離に住んでいる人からは「近くに手伝える家族がいない。高齢者だけでは手続きが難しい」との声も上がっているという。

 このような場合に備え、厚生労働省はケアマネに担当する高齢者の申請手続きの協力を求めている。このケアマネは「法的権限のない私たちに資産確認などを求められても…」と困惑している。

◆不正な軽減には罰則も

 今回の自己負担見直しは、特別養護老人ホームやショートステイの食費と居住費が対象となる。預貯金や株式、たんす預金などの金融資産が単身者で一千万円、夫婦で計二千万円超ある人の軽減措置がなくなり、これまでの二倍程度になることもある。資産には、土地や建物などの不動産、車や宝石などの動産は含まれず、住宅ローンなどの借金は差し引かれる。

 八月分の介護費から軽減を受けるには、月内の申請が必要だ。申請時は預金通帳のコピーなどの提出が必要。もし意図的な虚偽申告で不正に軽減を受けた場合は、最大で受給額の三倍を支払う罰則も設けられた。

ケアマネジャーにとっても、銀行の講座のコピーを準備するというのはなかなかハードルの高い要求で、
これを家族が対応できるのであればいいのですが、
対応できる家族がいない状況であったり、
そもそも資産のすべてがどうなっているのかを把握できる人がいない状況で、
それを申告して虚偽があれば罰則がありますというのは、これまでを考えれば非常に乱暴なのではないでしょうか。

今後、不動産や貴金属など、対象にならない資産への移行をするにしても、
いずれマイナンバーなどでチェックができるようになるので、資産の状況は行政からは筒抜けになりますので、
抜け道はなくなっていくでしょうから、これも一時しのぎにしかならないでしょう。

この自己負担の変更も、
マイナンバーが運用されてからにしていただきたかったですね。