義理の母を長年介護 妻が相続で報われる条件

 会社員のAさんは父親を亡くした10年前から、母親と同居し、妻と力を合わせて介護をしてきた。Aさんには離れて暮らす弟が1人いるが、介護の苦労にはあまり関心がない。いずれはくる母親の相続。法律で定められた相続割合は、Aさんと弟が2分の1ずつ。しかし、長年介護で苦労してきた妻がそれで納得してくれるだろうか。

 生前、看病したり事業を手伝ったりして財産の維持・増加に貢献した場合、その度合いに応じて財産を多く受け取れるというのが法律上の考え方です。これを「寄与分」といいます。Aさん夫婦が、母親の介護を理由に寄与分を求めたとしても不思議はありません。

 ただし、ほかの相続人(財産を受け取る側の親族)との話し合いで理解が得られるとは限らず、こじれれば家庭裁判所の判断を仰ぐことになります。介護の労力が本当に寄与分に値するほど重たかったのか、厳しい目で検討されます。

 民法は親子、兄弟などは互いに助け合って暮らすよう義務付けています。この義務の範囲を超えるほど介護に力を尽くして初めて、寄与分として認められます。ですから、病院の送り迎えや日常生活の見守りは該当しません。

 どこまでの介護をすれば寄与分になるのか、明文化された基準はありません。こすぎ法律事務所の北村亮典弁護士によると実務上は、少なくとも「要介護2以上の人を何カ月にもわたって自宅で自ら介護した」といった目安があります。

 親を介護する場面では、法定の相続人にはあたらない妻が、大きな役割を果たすことはよくあります。こうした場合、「妻を夫の『補助者』とみなして夫に寄与分を認める考え方もある」と本多法律事務所の本多広高弁護士は言います。

 寄与分が認められた場合、その金額はどう算定するのでしょうか。介護に関してベースとなるのは、公的介護保険で定められたサービスの報酬額です。例えば20分未満のオムツ交換などで事業者が得るのは1710円。こうした額に0.7程度を掛けて概算します

 全額が認められるとは限りません。例えば母親の名義の家に無償で同居しながら介護をしていたら、家賃に相当する額が差し引かれます。母親の面倒を見ることを条件に過去に、財産を多めに相続していたことがあるなら、改めて介護の寄与分を求めるのは難しくなります。

 介護のケースに限らず、裁判所は民法によって親族に期待されるレベルを超えている分しか寄与分と認めません。仮にAさんが弟と裁判で争っても、満足のいくほど寄与分が認められる可能性は高くないのです。

 Aさん夫婦が介護への貢献を考慮してほしいなら、母親に遺言を書いてもらうのが確実です。介護の大変さを弟に理解してもらうよう、普段から意思疎通を図っておくことも大切です。

相続で争わないために、介護の寄与分について

在宅介護の寄与分についての記事が掲載されていたので紹介しました。
要介護2以上であればという記載もありますが、
介護度でその家庭での介護負担がはかれるわけではなく、
認知症の家族の介護の場合は、徘徊であったり奇声や妄想であったり、
近隣住民に迷惑をかけることもあったりしますので、家族が感じるストレスや負担というものも大きくなります。

ただ、あくまで参考として考えた上で、
遺産相続などの際に紛争にならないよう、目安にしていただく材料にはなります。
介護に苦労した家族が、見返りを求めての介護だったと白い目で見られてしまうこともあります。
普段から、介護がどんなに大変なのか、共通の理解ができるような対話が親族間でできていることが
一番重要なことなのかもしれません。